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2024/09/14 00:00




【文様の特徴】

「格子(こうし)」は幾何構成模様のひとつで、平行する経と緯の線が直角で交差するように構成される文様です。「格子縞(こうしじま)」ともいい、縞文様の一種にも数えられます。斜めに交わるものは「斜格子(ななめごうし)」や「襷(たすき)」「菱繋ぎ(ひしつなぎ)」とよばれています。

【名前の由来】

「格子(こうし)」とは本来、窓や出入り口に取り付ける建具の一種のことです。細長い木を間を透かして縦横に組んだもので、その様子に似ていることからこの名がつきました。

「縞(しま)」と名のつくものでも格子文様の場合も多くあります。本帖では複数名ある文様は見た目に応じて分類、掲載しています。

また、格子文様自体は古くからありますが、本帖の時代区分は名称がつけられた時代をもとに登録しています。

【文様の種類】

「格子(こうし)」は有職文様や能装束、貴族や庶民のきものや帯地まで幅広く用いられ、様々な名がつけられました。

―基本の格子文様

シンプルな縦横比の同じ格子を「碁盤格子(ごばんごうし)」、3本を1組にした格子を「三筋格子(みすじごうし)」、大きな太い格子の中に小さな細い格子を交差させたものを「翁格子(おきなごうし)」、太い格子に細い格子が平行したものを「童子格子(どうじこうし)」や「子持格子(こもちごうし)」といいます。




―大きさで名前が変わる格子文様

縦と横が同じ幅のものは「弁慶格子(べんけいごうし)」といい、これより大きいものを「大格子(おおごうし)」、小さいものは「小格子(こごうし)」とよばれています。歌舞伎では太い大柄は威勢の良さを、細かい柄は上品さを表す場合が多くあります。



―品のある細かい格子文様

とても細かい格子は「味噌漉格子(みそこしごうし)」「微塵格子(みじんごうし)」といいます。


―江戸の風流歌舞伎役者文様

その他にも「役者好み(やくしゃごのみ)」や「歌舞伎役者文様(かぶきやくしゃもよう)」「役者模様(やくしゃもよう)」「役者文様(やくしゃもんよう)」「役者柄(やくしゃがら)」という歌舞伎役者が愛用し、その名がつけられたものがあります

「菊五郎格子(きくごろうごうし)」「団十郎格子(だんじゅうろうごうし)」「高麗屋格子(こうらいやごうし)」「六弥太格子(ろくやたごうし)」「市村格子(いちむらごうし)」「団七格子(だんしちごうし)」「三津五郎格子(みつごろうごうし)」「中村格子(なかむらごうし)」「播磨屋格子(はりまやごうし)」などが有名です。








―その他いろいろな格子文様

また、「市松(いちまつ)」や「網代(あじろ)」なども格子の一部に数えられることがありますが、本帖では別項目を設けます。なお、海外文様である「千鳥格子(ちどりごうし)」は本項目で取り扱います。

その他にも「格天井(ごうてんじょう)」「障子格子(しょうじごうし)」を意匠化したものなど、多種多様な文様が存在します。

―葛飾北斎が考案した格子文様

最後に、江戸時代後期の浮世絵師である葛飾北斎(かつしかほくさい)が文政7年(1824)に刊行した『新形小紋帳(しんがたこもんちょう)』から北斎がオリジナルで考えた「万字格子(まんじこごうし)」「三重格子(みえごうし)」を紹介します。文様名は、北斎が書き残してあるものはそれをもとに、記載が無いものや現代と言葉遣いが違うものは本帖が新たに命名し直しました。


【参考文献】

中島泰之助『別冊 日本の文様③縞・格子』光琳社出版(1978)
永田生慈『北斎の絵手本 三』岩崎美術社(1986) 
尚学図書・言語研究所『文様の手帖』小学館(1987)
木村孝『和の意匠にみる文様の名の物語』淡交社(2005)
髙田啓史『伝統の染織工芸意匠集1 小紋文様』グラフィック社(2007)
木村孝『きもの文様図鑑』ハースト婦人画報社(2014)
石崎忠司『和の文様辞典 きもの模様の歴史』講談社(2021)

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