重要なお知らせエリアを非表示

2024/09/12 00:00

【文様の特徴】

「縞(しま)」は幾何構成模様のひとつで、平行する線によって構成されます。

経の線で構成される「縦縞(たてじま)」と緯の線から構成される「横縞あ(よこじま)」、経と緯の線から構成される「縦横縞(たてよこじま)」とに分類されます。

「縞(しま)」単体では縦縞を指すことが多く、横縞のことは「段(だん)」、縦横縞は「格子(こうし)」といわれ、日本の古い時代に織られていたのは横段が主流でした。

縞を斜めにしたものは「手綱(たずな)」や「手綱取り(たずなどり)」とよばれています。

【名前の由来】

江戸時代までは段や格子が主流で、縦縞は一般的ではなく「筋(すじ)」や「間道(かんどう)」「柳条(りゅうじょう)」「条布(すじめ)」と呼ばれていました。

室町時代から江戸時代初頭にかけて中国などから伝来した縞・格子の高級な織物は「間道(かんどう)」とよばれています。とくに茶席の裂として用いられ、「名物裂(めいぶつぎれ)」の名で珍重されてきました。「広東」や「漢島」「漢東」などの文字をあてることもあります。「間道(かんどう)」とは、間を隔てて織った筋道という説があります。

また、中国産の絹の間道は「唐物(からもの)」と呼び、南方の木綿のストライプは「島渡り(しまわたり)」や「島物(しまもの)」といいました。「縞(しま)」という字は江戸時代に当て字として使用されるようになったという説があります。日本が島国であるため、諸外国も島と考え、その島国から渡ってきたという意味があるといわれています。

【文様の種類】

日本の縞ものは種類が多く、織物では御召、紬、木綿、染色では江戸小紋や手書き小紋があります。配色や配列によって様々な名がつけられました。

―舶来品の縞文様

室町時代から、江戸時代末期にかけて、ポルトガルやオランダ船によってインドからもたらされた植物染料による木綿織物を「唐桟縞(とうざんじま)」といいます。絹のように細手で、庶民の流行品となりました。インドの地名であるサン・トメから「桟留縞(さんどめじま)」ともよばれています。江戸後期には国産品も作られ、現在に至ります。

名物裂の間道で有名なものは「日野間道(ひのかんどう)」「青木間道(あおきかんどう)」「望月間道あ(もちづきかんどう)」「船越間道(ふなこしかんどう)」などがあります。愛用した茶人の名がつけられ、同じ名前でも複数の文様が類存在します。




―木綿織物の縞文様

江戸時代後期になると、国内で木綿の縞織物を生産するようになり、庶民のあいだで流行しました。「鰹縞(かつおじま)」「矢鱈縞(やたらじま)」などが代表的な縞文様です。


―江戸小紋の縞文様

織物に限らず江戸小紋の染物にも用いられ、「大名縞(だいみょうじま)」「金通縞(きんとおしじま)」「三筋立(みすじだて)」「七五三(しちごさん)」「棒縞(ぼうじま)」「牛蒡縞(ごぼうじま)」「滝縞(たきじま)」「よろけ縞(よろけじま)」「養老縞(ようろうじま)」「千筋(せんすじ)」「万筋(まんすじ)」など様々な名前がつけられました。









―親子関係の願いを込めた縞文様

太い線に細い線を添えることを「子持ち」と呼びます。縞に限らず、格子や家紋などでもこのような表現が用いられています。両方に細い線がある縞を「両子持縞(りょうこもちじま)」片方だけに線がある縞を「方子持縞(かたこもちじま)」太い線の中に細い線がある縞を「中子持縞(なかこもちじま)」といいます。その他にも「親子(おやこ)」や「孝行(こうこう)」「翁(おきな)」など親子関係を思わせる名前がつけられています。博多織の「博多献上(はかたけんじょう)」などでよく見られます。

―江戸の風流歌舞伎役者文様

また、「役者好(やくしゃごの)み」や「歌舞伎役者文様(かぶきやくしゃもんよう)」「役者模様(やくしゃもよう)」「役者文様(やくしゃもんよう)」「役者柄(やくしゃがら)」という歌舞伎役者が愛用し、その名がつけられたものがあります。「芝翫縞(しかんじま)」「仲蔵縞(なかぞうじま)」「三津五郎縞(みつごろうじま)」などが有名です。



―江戸小紋における柄の展開

その他にも、「竹縞(たけじま)」「木賊縞(とくさじま)」「柳縞(やなぎじま)」のように植物などのモチーフを縞状に配したものなど多種多様な文様が存在します。





―各地で織られた地縞文様

世界各地で織られ、その土地独特の文様である場合は織られた土地名がつけられました。

【参考文献】

中島泰之助『別冊 日本の文様③縞・格子』光琳社出版(1978)
尚学図書・言語研究所『文様の手帖』小学館(1987)
小笠原小枝『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館(2001)
木村孝『和の意匠にみる文様の名の物語』淡交社(2005)
髙田啓史『伝統の染織工芸意匠集1 小紋文様』グラフィック社(2007)
藤井建三『格と季節がひと目でわかる きものの文様』世界文化社(2009)
木村孝『きもの文様図鑑』ハースト婦人画報社(2014)
石崎忠司『和の文様辞典 きもの模様の歴史』講談社(2021)

※高品質の文様をお客様に提供するよう努力しておりますが、文献などには諸説があります。そのため、最新性、正確性、有用性などを保証するものではなく、その内容により、お客様または第三者が被った損害につきましては、一切の責任を負いません。ご了承ください。